歯ぎしりは眠っている間に無意識化で歯をぎりぎりと強い力で擦り合わせることをいいます。ひどい音がするイメージがありますが、実際には音のしない歯ぎしりをする人も多くおられ、ご本人も気づかない場合があります。歯ぎしり・食いしばりの原因とその対策についてご説明します。
目次
歯ぎしり・食いしばりとは?
歯ぎしり(ブラキシズム)とは、無意識のうちに上下の歯を強くこすり合わせる行為を指します。特に睡眠中に発生することが多く、寝ている間に自分では気づきにくいことが特徴です。
一方、食いしばりは、強く歯を噛み締める行為で、これも無意識に行われることが多いです。どちらも歯や顎に大きな負担をかけ、様々な問題を引き起こす可能性があります。
歯ぎしり・食いしばりの主な原因
歯ぎしりや食いしばりの原因は様々なものが考えられます。しかし直接的な原因は解明されていないのが実情です。歯ぎしりの歯を原因と考えられている主なものは以下の通りです。
1. ストレス
現代社会において、ストレスは歯ぎしりや食いしばりの最も一般的な原因の一つとされています。仕事や人間関係、家庭内の問題、生活環境の変化などがストレスとなり、無意識のうちに歯を食いしばる行動に繋がることがあります。
特に、ストレスが溜まりやすい人やストレスに敏感な人は、歯ぎしりや食いしばりを起こしやすい傾向にあります。
2. 噛み合わせの異常
不正咬合(噛み合わせが悪い)は、歯ぎしりや食いしばりの原因となることがあります。上下の歯の位置が正しくないと、無意識に歯を正しい位置に戻そうとする力が働き、結果として歯を強くこすり合わせる行為が発生する場合があります。
不正咬合は、歯の自然な位置を維持するための自然な反応であり、歯ぎしりや食いしばりが頻繁に起こる場合、歯科医師に相談することが重要です。
3. 遺伝的要因
遺伝的な要因も、歯ぎしりや食いしばりの発生に影響を与えることがあります。家族に歯ぎしりや食いしばりの習慣がある場合、その影響を受けることがあります。
遺伝的な要因によるものは、環境や生活習慣によるものと異なり、自己管理だけでは改善が難しい場合があります。この場合、専門的な治療が必要となることがあります。
4. 生活習慣
生活習慣も歯ぎしりや食いしばりに影響を与える要因の一つです。特に、以下のような生活習慣が影響を与えることがあります:
- カフェインの過剰摂取・・コーヒーやエナジードリンクなどのカフェインを多く含む飲み物の摂取は、神経を刺激し、歯ぎしりや食いしばりを引き起こす可能性があります。
- アルコールの摂取・・アルコールは筋肉のリラックスを促進する一方で、睡眠の質を低下させ、結果的に歯ぎしりや食いしばりを誘発することがあります。
- 喫煙・・喫煙もまた、神経系に影響を与え、歯ぎしりや食いしばりの原因となることがあります。
5. 睡眠障害
睡眠障害も歯ぎしりや食いしばりの原因として知られています。以下のような睡眠障害が歯ぎしりや食いしばりに関連しています。
- 不眠症・・十分な睡眠が取れない状態が続くと、身体が常に緊張状態にあり、歯ぎしりや食いしばりが起こる場合があります。
- 睡眠時無呼吸症候群・・睡眠中に呼吸が一時的に止まるこの症状は、睡眠の質を著しく低下させ、歯ぎしりや食いしばりのリスクを高めます。
原因は一つに限定されるものではなく、実際には複数の要因が絡み合って起こっていることが多いです。したがって、原因を特定し、それに応じた対策を講じることが重要です。
歯ぎしり・食いしばりが引き起こす問題
歯ぎしりや食いしばりは、以下のような問題を引き起こす可能性があります。
- 歯のすり減り・・歯の表面がすり減り、知覚過敏や虫歯のリスクが高まります。
- 顎関節症・・顎の関節に負担がかかり、痛みや違和感を感じることがあります。
- 頭痛・・特にこめかみや後頭部にかけての痛みが頻繁に発生します。
- 肩こりや首の痛み・・顎の緊張が肩や首の筋肉に波及し、痛みを引き起こすことがあります。
セルフチェック方法
セルフで歯ぎしりや食いしばりの有無を確認するための方法として、以下のチェックリストを参考にしてください。
- 朝起きたときに顎や顔の筋肉が疲れている、痛む
- 歯がすり減ったり、欠けている
- 歯の表面が平らになっている
- 寝ている間に歯をこすり合わせる音がする
- 詰め物や被せ物が外れやすい
- 知覚過敏がある
- 口の中に傷がある(頬の内側や舌)
- ふと気づいたら奥歯を噛んでいるときがある
歯ぎしり・食いしばりの対策方法
歯ぎしりや食いしばりを防ぐためには、原因に応じた適切な対策を行うことが重要です。
- ストレス管理
- 生活習慣の改善
- 適切な睡眠環境
- マウスピースの使用
1. ストレス管理
ストレスが原因の場合、以下の方法でストレスを管理することが有効です:
リラクゼーション法
- ヨガ・・ヨガは身体の緊張をほぐし、心身のリラクゼーションを促進します。特に、寝る前に軽いヨガを行うことで、深い睡眠が得られ、睡眠の質を向上させることができます。
- 瞑想・・瞑想は心を落ち着け、ストレスを軽減する効果があります。毎日数分間の瞑想を取り入れることで、リラックスした状態を保つことができます。
- 深呼吸・・深呼吸は自律神経を整え、リラックス効果をもたらします。ストレスを感じたときには、ゆっくりと深呼吸を行うと良いでしょう。
- 趣味や活動・・自分の好きな趣味や活動を楽しむことで、ストレスを解消しやすくなります。例えば、読書、音楽、絵画、スポーツなど、ご自身の興味のある内容でリフレッシュしましょう。
2. 生活習慣の改善
生活習慣の改善も歯ぎしりや食いしばりの予防に役立ちます。
カフェインやアルコールの摂取を控える
カフェインやアルコールの摂取を控えることで、神経の過剰な興奮を抑えてリラックスし、歯ぎしりや食いしばりを減少させることができます。特に、寝る前の数時間はこれらの摂取を避けるようにしましょう。
バランスの取れた食事
栄養バランスの取れた食事を心がけることで、身体全体の健康状態を改善し、歯ぎしりや食いしばりのリスクを減らすことができます。
適度な運動
運動はストレス解消に効果的であり、適度な運動を日常生活に取り入れることで、心身のバランスを保つことができます。
3. 適切な睡眠環境
質の高い睡眠を確保するために、睡眠時の環境を整えましょう。
- 快適な寝具の使用・・ご自身に合った枕やマットレスを使用し、快適な睡眠環境を整えましょう。特に、首や肩に負担がかからない寝具を選ぶことが重要です。
- 規則正しい生活リズム・・毎日同じ時間に寝起きすることで、体内時計を整え、質の高い睡眠を促進します。休日も同じリズムを保つことが理想的です。特に朝日を浴びることでリズムが整います。
4. マウスピースの使用
強い力や摩擦から歯を守るために、歯科医院でナイトガードと呼ばれるマウスピースを作製してもらって毎晩使用することが効果的です。マウスピースは、以下のような効果があります。
- 歯や顎へのダメージを軽減・・マウスピースを装着することで、歯や顎への直接的な負担を軽減します。特に、就寝時に装着することで、無意識の噛みしめを防ぐことができます。
- 歯の摩耗を防止・・歯の摩耗を防ぎ、知覚過敏や虫歯のリスクを減少させます。
ナイトガードとは?
ナイトガードは、歯や顎を守るためのマウスピースです。歯科医院で患者さんの歯型をもとに、歯にぴったりとはまるマウスピースを作製します。主に就寝時に使用され、以下のような効果があります。
- 歯の摩耗防止・・歯ぎしりや食いしばりによる歯の摩耗を防ぎます。
- 顎関節の保護・・顎関節にかかる過剰な力を分散し、顎関節症の予防や緩和に役立ちます。
- 頭痛や肩こりの軽減・・お口周りの筋肉の緊張を緩和し、関連する頭痛や肩こりを軽減します。
※ナイトガードは保険適用です。
※ナイトガードは歯ぎしり・食いしばりを治すものではありません。
5. 専門的な治療方法
症状が重い場合や、セルフケアで改善が見られない場合は、専門的な治療を受けることが必要です。歯科医師による治療方法として、以下のようなものがあります。
マウスピースの処方
歯科医院でナイトガードを作成してもらって夜間に装着することで、歯ぎしりや食いしばりから歯や顎関節への負担を減らすことができます。
ボトックス注射
咬筋にボトックスを注射することで、筋肉の過剰な活動を抑え、噛みしめを軽減します。この治療法は、特に筋肉の緊張が原因の場合に有効です。※ボトックス注射を行っている歯科医院もあります。ボトックスには保険がききません。
矯正治療
不正咬合が原因の場合、矯正治療を行うことで噛み合わせを改善し、歯ぎしりや食いしばりを予防します。
- カウンセリング・・ストレスが主な原因である場合、心理カウンセリングを受けることで、ストレスの原因に対処し、心身のバランスを回復することができます。
7. 日常生活でできる予防策
日常生活で実践できる予防策を取り入れることで、歯へのリスクを減少させることができます。
日中は上下の歯を離す
まず、食事のとき以外は上下の歯が接触しないように離す癖をつけましょう。食いしばりのある方は、上下の歯が接触している時間が長い傾向があります。それだけでにっちゅの食いしばりを予防できます。
適度な運動
運動はストレス解消に効果的です。ジョギングやウォーキング、ストレッチなど、軽い運動を日常生活に取り入れることで、心身のバランスを保ちましょう。
ホットタオルの使用
寝る前に顎にホットタオルを当てて筋肉をほぐすことで、リラックス効果を高め、歯ぎしりや食いしばりを防ぐことができます。
適切な姿勢の維持
日常生活で正しい姿勢を保つことが、顎や首への負担を減らし、歯ぎしりや食いしばりの予防につながります。特に、デスクワークを行う際には、姿勢に注意し、適宜休憩を取りましょう。
ガムの使用
日中にガムを噛むことで、顎の緊張を和らげることができます。ただし、長時間の強い力で噛み続けると逆効果となる場合があるため、適度な時間に留めましょう。
これらの対策を組み合わせて取り入れることで、症状を軽減し、健康な口腔環境を維持することができます。歯科医師と相談しながら、自分に合った対策を見つけて実践することが重要です。
歯ぎしり・食いしばりが原因で知覚過敏が起こっているときの歯科治療
歯ぎしり・食いしばりによって歯の位置部分が特に強く当たってエナメル質がすり減り、知覚過敏を起こすことがあります。この場合、主に痛みがおこらないようにするのが目的となります。
- 痛み止めの服用
- 塗り薬の塗布
- すり減った部分をレジンでコーティング
- 歯の神経を抜く
まとめ
歯ぎしり・食いしばりは、ストレスや不正咬合、生活習慣など様々な原因によって引き起こされます。これらの習慣が続くと、歯の摩耗や顎関節症、頭痛、肩こりなどの健康問題を招く可能性があります。
対策としては、ストレス管理や生活習慣の改善、適切な睡眠環境の整備が重要です。また、ナイトガードの使用や専門的な治療方法を取り入れることで、症状の軽減や予防が期待できます。