切端咬合だから矯正したほうが良いと言われても、はっきりと何が悪いか状態を理解できる方は少ないのではないでしょうか。矯正のご相談で歯科医院へ来院して初めてその言葉を知った方も多いでしょう。今日は「切端咬合とはどのように矯正するのか」という事についてご説明いたします。
切端咬合とは
切端咬合(せったんこうごう)とは、上下の前歯が互いに接触して歯の先端同士が直接当たる咬み合わせを指します。
正しい噛み合わせ
- 上下の前歯は3mm弱の前後差があり、上の前歯が下の前歯を少し覆う
- 奥歯でしっかり噛み合わせる
切端咬合
- 前後差がなく上下の前歯が常に接触する噛み合わせ
切端咬合では食べ物を前歯で噛みきることが難しい為、特定の歯や顎に負担がかかる噛み方をします。毎日顎をずらして噛むようにしていると口腔内でトラブルを引き起こす可能性があります。前歯のすり減りや、噛む力が分散されないため一部の歯への過度なダメージ、将来的には歯が抜けてしまうなど歯の健康に大きな影響を与えます。
切端咬合になる原因は?
切端咬合の原因は先天的、後天的など様々です。前歯の前後差がない問題を抱える切端咬合は、全体がその状態になるのではなく一部の歯がなるケースが多いです。受け口(下顎前突)と誤解されがちな不正咬合ですが、切端咬合の場合は顎が出る見た目を伴わず上顎と下顎のバランスの悪さが原因になっているケースがあります。
上顎や下顎の成長異常やアンバランス
上顎や下顎の成長がうまくいかずアンバランスである場合、切端咬合が発生することがあります。例えば、下顎が上顎に比べて過度に成長すると、上下の前歯が正しくかみ合わない状況になります。反対に下顎の広さは通常でも、上顎が成長できなければ同じ状態になってしまいます。
歯の生えている角度が違う
歯の配置が不規則だったり、内側に向いて生えていると切端咬合を引き起こすこともあります。歯のスペース不足や向きがずれていると、噛み合わせが不正確になりやすいです。
口呼吸や指しゃぶりなどの態癖がある
乳幼児期に指しゃぶりや舌を押し出す癖があると、歯並びや顎の発達に影響を与えます。口呼吸は常に口を開けた状態でなければ息が出来ないため、舌を正常な上顎のスポットへ置けず、後方へ下がったままになります。上顎の成長に必要な舌の力が機能しなければ、上顎が未成長できなくなり、切端咬合が発生する可能性があります。
家族に同じような歯並びの人がいる
先天的な原因として、家族の咬み合わせパターンが影響する場合があります。顎の発達や歯の位置は遺伝的な要因も関係しています。
切端咬合を放置したら影響は?
切端咬合を放置すると口腔内や全身に以下のような影響を及ぼす可能性があります。
前歯や奥歯の摩耗
前歯は直接接触するため、エナメル質のすり減りが進行しやすくなります。前歯に前後差がなく噛み切ることが難しく、奥歯やどちらか一方の歯で噛もうとするため、前歯と奥歯いずれも摩耗するケースがあります。また、歯が短くなったり、エナメル質にひびや欠けが生じることで、歯の感度が増し、熱いものや冷たいものがしみる知覚過敏のような状態になります。
歯周病のリスク増加
不正咬合により一部の歯に過剰な力がかかるということは、歯周組織にも負担がかかっています。そのため、歯周病が悪化することがあります。
顎関節症
切端咬合は噛みにくさから顎を不自然な状態まで動かして負荷をかけ続けているため、顎関節症を引き起こすリスクがあります。これにより、顎の痛みや開口障害が生じることがあります。
発音障害
前歯の噛み合わせが不正確であると、息を吐きだす特定の音(サ行やタ行など)が発音しにくいです。一部のみ切端咬合を起こしている方ならば、会話に影響が及ぶことが考えられます。
子供の場合顎の成長が難しい
切端咬合になっている幼児期の子供であれば、しっかりと噛むことが出来にくい状態です。噛みづらさから、あまり咀嚼をせず飲んでしまうため、顎を成長させることができません。それにより、受け口など重度の噛み合わせ不良になることがあります。
切端咬合の治し方
切端咬合の治療には、個々の症状や年齢に応じてさまざまな矯正方法が存在します。外科矯正以外の矯正治療法では、歯を正しい位置まで動かす動的治療を行った後に、歯をその位置で固定する静的治療を行わなければなりません。リテーナー(保定装置)を装着して、歯が動かないように固定しましょう。
子供の場合
まだ永久歯が生え揃っていない子供の場合は、下記の治療法があります。
顎矯正
切端咬合が顎の成長やアンバランスさに起因する場合、顎の成長を調整するための装置を使用します。特に成長期の子供に効果的な方法で、顎の成長を促進したり、コントロールします。
ワイヤー矯正
歯の表面にブラケットとワイヤーを装着して、歯を徐々に正しい位置に動かしていく治療法です。時間はかかりますが、矯正力が適正にかかり、咬み合わせを改善できます。ブラケットなどを装着する位置は三通りあります。
- 表側に銀色のワイヤーをつけて目立つが費用の安い表側矯正
- 表側に白色のワイヤーをつけて遠くの人には目立ちにくいホワイトワイヤー矯正
- 裏側にワイヤーをつけて近くの人にも見えないが費用はかかる裏側矯正
マウスピース矯正
透明なマウスピース(アライナー)を使って、交換していくことで歯を徐々に動かす方法です。目立たず取り外し可能なため、日常生活に支障をきたしにくいのが特徴です。ただしきちんと装着時間を守らなければ歯は動かず、治療期間が延びてしまいます。
大人の場合
大人は顎の成長が止まっているため、顎の成長を利用した矯正は難しいです。ただし、前述したワイヤー矯正やマウスピース矯正の他に、大人ならば下記のような治療も適用できます。
外科手術
骨格に起因して深刻な切端咬合や顎の形状に大きな問題がある場合、外科的なアプローチが必要になることもあります。口腔外科にも精通している歯科医院を選択し、事前の説明や検査が丁寧なものであるか確認し、安全に手術へ臨めるようにしましょう。
まとめ
切端咬合の矯正治療は、口腔内の健康を保つためにも非常に重要なステップです。矯正治療後に定期的な歯科検診を受けることで、再び咬み合わせが悪くなることを防ぎ、健康で美しい歯並びを維持できます。噛み合わせが改善されても、誤った習慣が続くと再発のリスクがあるため、噛む力が偏らないよう、正しい噛み方を意識して食事を摂ることが重要です。