失った歯を補うための主な選択肢として「入れ歯」と「インプラント」があげられます。入れ歯は長年親しまれた治療法で、費用面でのメリットがあります。一方、インプラントは最新技術を用いた治療法で、見た目や機能性の高さが魅力です。それぞれの特徴やメリット・デメリット、患者さんが自分に最適な選択をするための参考情報をご説明します。
入れ歯とは
入れ歯は、歯を失った場合に人工の歯で補う治療法で、以下の特徴があります。
- 種類・・部分入れ歯と総入れ歯の2種類があり、部分入れ歯は一部の歯が残っている場合に使用し、総入れ歯は全ての歯を失った場合に使用します。
- 素材・・保険適用の樹脂製入れ歯から、自費診療の金属やシリコンを使った高性能なものまで幅広くあります。
- 固定方法・・部分入れ歯はバネ（クラスプ）を残っている歯にかけて固定します。総入れ歯は吸着力で安定させる仕組みです。
- 費用・・保険適用で比較的低価格ですが、自費診療の場合は審美性や快適性が向上します。
- 取り外し可能・・毎日の清掃やお口のケアがしやすい点が特徴です。
入れ歯は、比較的短期間で作製でき、身体的負担が少ない治療法として広く利用されています。
メリット
- 費用が比較的低い・・保険適用の入れ歯であれば、費用を抑えることができます。
- 手術が不要・・外科的手術を伴わないため、身体的負担が少ないです。
- 治療期間が短い・・通常、数回の通院で作製が完了します。
デメリット
- 装着時の違和感・・つけた時に異物感を感じることがあります。
- 咀嚼力の低下・・天然歯と比べて噛む力が弱くなることがあります。
- 見た目の問題・・部分入れ歯の場合、金属のバネが見えることがあります。
インプラントとは
インプラントは、歯を失った場合に顎の骨に人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法で、以下のような特徴があります。
- 人工歯根・・チタン製の小さなスクリュー状の人工歯根を顎の骨に埋め込むことで、天然歯に近い安定感を実現します。
- 構造・・人工歯根（インプラント体）、支台部（アバットメント）、上部構造（被せ物）の3つのパーツから構成されています。
- 固定力・・人工歯根は骨と結合するため、噛む力が強く、天然歯と同じような機能性を持ちます。
- 審美性・・自然な見た目で、他の歯と調和する色と形が可能です。
- 耐久性・・適切なケアをすれば、10年以上長持ちすることが期待されます。
- 治療期間・・骨とインプラントが結合するまで数ヶ月を要するため、治療期間が比較的長いです。
- 費用・・自費診療のため、1本あたり数十万円以上の高額になります。
- 手術が必要・・外科的手術を伴うため、全身の健康状態が考慮されます。
インプラントは、審美性や咀嚼能力を重視する患者さんにとって、天然歯に最も近い治療法とされています。
メリット
- 高い咀嚼能力・・天然歯に近い噛む力を持ち、食事を楽しめます。
- 審美性が高い・・見た目が自然で、他の歯と調和します。
- 他の歯への影響が少ない・・隣接する歯を削る必要がなく、健康な歯を保護できます。
デメリット
- 高額な費用・・自費診療となり、1本あたり30万円以上かかることがあります。
- 手術が必要・・外科的手術を伴うため、身体的・精神的負担があります。
- 治療期間が長い・・骨とインプラントが結合するまで数ヶ月を要します。
入れ歯とインプラントの比較
| 入れ歯 | インプラント | |
| 費用 | 保険適用で低コスト | 自費診療で高額 |
| 外科手術の有無 | 不要 | 必要 |
| 治療期間 | 短期間 | 長期間 |
| 噛む力 | 低下する可能性あり | 天然歯に近い |
| 審美性 | 部分入れ歯は金属が見える | 自然で美しい |
| 他の歯への影響 | バネをかける歯に負担がかかる | 影響が少ない |
治療法選択のポイント
治療法を選択する際には、以下の点を考慮することが重要です。
- 費用面・・予算に応じて選択します。
- 身体的状態・・全身の健康状態や口腔内の状況を確認します。
- 生活スタイル・・食事や生活習慣に合わせて選びます。
- 審美性の重視度・・見た目をどの程度重視するかを考えます。
- メンテナンスを必ず受ける必要がある・・定期的なケアを続けられるかを検討します。
定期的なメンテナンスの重要性
入れ歯の場合
- 就寝前には取り外し、入れ歯専用の洗浄剤で洗って清潔に保つ必要があります。
- 毎日の取り外しと洗浄を怠ると、歯垢がついたりカビが発生し、口臭や感染症の原因になることがあります。
- 定期的な健診を受けて、入れ歯の調整や修理を行うことで、装着感を維持しやすくなります。
インプラントの場合
- 歯磨きだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使ってインプラント周囲の清掃を徹底する必要があります。
- インプラント周囲炎を防ぐために、3～6ヶ月ごとに歯科医院での健診と専門的なクリーニングを受けることが推奨されます。
- インプラントの寿命を延ばすには、全身の健康状態（糖尿病や喫煙など）の管理も重要です。
まとめ
入れ歯とインプラントは、どちらも失った歯を補うための効果的な治療法ですが、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。
- 費用を抑えたい場合・・入れ歯が適しています。
- 自然な見た目や高い機能性を求める場合・・インプラントが理想的です。
- 全身疾患などがある場合・・手術不要の入れ歯が選ばれることが多いです。
また、どちらを選んだ場合でも、治療後のメンテナンスを怠ると、長期的な問題が生じる可能性があります。毎日のケアと定期的な歯科健診を習慣化することで、より快適な生活を送ることができます。
