下唇を噛む癖があると出っ歯になるのでは?と不安になることがあります。下唇を噛む癖の原因は何か、大人になっても続けているとどのようなことになるのか、詳しくご紹介いたします。
下唇を噛む癖はどんなことが原因?
下唇を噛む癖を咬唇癖(こうしんへき)と専門的に呼び、無意識に上の前歯の裏が下唇に接触して下唇を噛んでしまっている状態です。咬唇癖は、緊張、不安、ストレスなどの精神が原因で起こることが多いです。乳歯は永久歯よりも歯のサイズが小さいため、下唇に歯が巻き込まれたことによる出っ歯(上顎前突)は起こりにくいです。ただし、永久歯になってもその癖を続けていると上顎前突になりやすく、見た目や噛み合わせにトラブルが生じる可能性が高いです。
歯並びに影響を与えそうな他の癖は?
歯並びや噛み合わせを悪くしてしまうような癖のことを口腔習癖(こうくうしゅうへき)と呼びます。咬唇癖もこれに該当しますが、他の口腔習癖についてご説明します。
- 指しゃぶりをする
- 爪を噛む
- 口呼吸をする
- 舌で前歯を押す
- 片側噛みをする
- 歯ぎしりをする
口腔習癖以外に影響なし?
口腔習癖はお口周りの悪い癖ですが、態癖(たいへき)も歯並びや顎へ影響を与えます。態癖とは、日常において無意識で行う癖です。広い意味では口腔習癖も態癖に該当し、日常生活で態癖を続けると、歯並びの乱れや顎のずれ以外に、身体の左右のバランスが崩れるため、肩こりや疲労感が起きることがあります。日常生活における態癖を挙げます。
- 頬杖をつく
- 姿勢が悪い
- うつぶせ寝をする
- 横向き寝をする
口腔習癖や態癖を改善することで、症状の軽減や予防に繋がります。
下唇を噛む癖を続けるとリスクある?
下唇を噛む癖を続けると、歯並びや噛み合わせなどにリスクがあります。これらのリスクを回避するためにも、下唇を噛む癖を改善することが重要です。
歯並びへの影響
出っ歯(上顎前突)の原因
下唇を長期間噛むと上顎の前歯が前方へ動きます。反対に下顎の前歯は唇を噛む力で内側へ倒れます。歯が前に押し出されて出っ歯になってしまいます。
下顎の歯の後退
下唇を噛む癖があると、下顎の歯が内側へ押されるため、噛み合わせが悪くなることがあります。
開咬(かいこう)のリスク
下唇を噛むことから、上下それぞれ動いてしまい、奥歯を噛み合わせた際に上下の歯が噛み合わない状態が進行してしまいます。
噛み合わせへの影響
歯並びに不正咬合起きている状態は、おおよそ噛み合わせも悪くなっています。噛み合わせが悪くなると、顎関節がしっかり噛もうと負担を掛けてしまいます。それにより、顎関節症を引き起こす可能性があり、顎の痛みや口を開ける度に音が鳴ったり、頭痛などの症状が現れることもあります。このように、下唇を噛む癖は歯並びの乱れだけでなく、口腔全体の健康に悪影響を及ぼす可能性が高いのです。
その他に与える影響
歯並びや噛み合わせ以外にも、下唇を噛む癖は様々な影響を与えます。
唇の炎症や痛み
唇を噛む癖が習慣づいていると、噛む刺激によって唇に傷ができたり腫れや痛みを伴うことがあります。
感染症のリスク
唇の傷口から細菌が侵入してしまうと、炎症や感染症を引き起こす可能性があります。
心理的ストレスの増幅
下唇を噛むという行為は子供の場合、柔らかい唇の感触を楽しんでいることがあります。ただし、大人で癖が習慣づいている場合、感情を堪えることや、怒りを抑え込むために行ったり、緊張感や不安感を鎮めるために行います。一瞬治まっても、更に強い刺激を求めてしまう悪循環に陥ることがあります。
見た目への影響
唇が腫れたり変形したりすることで、見た目が気になり、自己肯定感に影響を及ぼすことがあります。
日常生活で改善する方法
下唇を噛む癖を治すには、日常生活の中で意識的な改善を行う必要があります。
意識的に癖を確認する
自分がどのような状況で下唇を噛む癖が出るのかを把握しましょう。仕事や勉強をしている集中時などが多ければ、それを認識することで、改善しやすくなります。
ストレス管理を徹底する
ストレスが原因の場合、深呼吸をしてみたり、趣味の時間を作り楽しむことで、ストレスを軽減することができます。
別の行動を取り入れる
下唇を噛みそうになった時、代わりにガムを噛む、唇にリップクリームを塗るなどの別の行動をとることで、癖を減らしましょう。
唇を保護する
唇が荒れている部分には、リップクリームやバームを使用して保護し、噛む刺激を減らしましょう。
記録する
噛んでしまったタイミングを記録すれば、癖の頻度を把握でき、改善に向けた意識を高めることができます。
子供に対して「お口噛むのやめなさい」と見つける度に注意するのはあまり効果的ではありません。ママに怒られてしまうというストレスのもとになるからです。それよりも下唇を噛んでしまった時に、子供に話しかけてみて気を反らして、癖を忘れさせる方が効果的です。
歯医者さんで改善する方法
下唇を噛む癖を自分で改善できない場合は、歯科医院で相談することをおすすめします。
歯科医院での治療法
歯科医院では下記の治療を行えます。なるべく早く歯科医師へ相談することで、スムーズな改善が期待できます。
マウスピースの装着
下唇を噛む癖を物理的に防ぐために、歯科医院でマウスピースを作製します。マウスピースを装着することで、唇を噛むことをやめたというケースもあります。
矯正治療
噛み合わせや歯並びが原因で癖が起きている場合は、矯正治療を行うことで問題を根本的に解決します。噛み合わせが悪い場合は全体的に矯正を行います。ワイヤー矯正やマウスピース矯正など矯正装置がありますので、患者さんに合った治療を行えば咬唇癖や噛み合わせが改善します。
MFT(口腔筋機能療法)を行う
MFT(口腔筋機能療法)を矯正治療と並行して行うことで舌や唇の動きを訓練して正しい位置にすることができます。舌を正しいスポットに置くことが出来れば、上下顎共にしっかりと発達できるため、噛む癖も改善します。
カウンセリングの実施
心理的な原因が大きく関与している場合は、専門家によるカウンセリングや行動療法が有効です。歯科ではなく、心療内科を選択するのが良いでしょう。
まとめ
下唇を噛む癖についての原因や影響、改善方法、歯科分野胃においての対応について詳しくご紹介しました。この癖は放置すると健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、早めに対処してもらうことが大切です。癖を治すことで、歯並びや口腔の健康を守り、快適な生活を送るための一歩を踏み出しましょう。