歯と口のトラブル

逆ガミースマイルとは何ですか?

逆ガミースマイルとは何ですか?

逆ガミースマイルという言葉をきいたことはありませんか。逆ガミースマイルとはどんな状態なのか、治療法としてどのような治療があるのかなど詳しくご紹介いたします。

逆ガミースマイルとは

逆ガミースマイル(隠れスマイル)とは、笑ったときに上の前歯がほとんど見えず、上唇が前歯を覆い隠してしまう状態を指します。通常のガミースマイルは、笑うと上の唇が上がり過ぎて歯と歯茎が目立ちすぎる状態です。対して、逆ガミースマイルは前歯が見えにくく、笑顔が引きつって固く見えることが特徴です。

主な特徴

  • 笑顔でいても上の歯がほとんど見えないため明るい印象を持たれない
  • 口元がこわばった印象になりやすい
  • 年齢よりも老けて見えたり、不機嫌そうに見えることがある

ガミースマイルと比較しても分かるように、笑顔がぎこちなく見えることや、もっと自然な笑顔になりたいと悩む人が多いのが、逆ガミースマイルの特徴です。

逆ガミースマイルの原因

逆ガミースマイルの原因は、筋肉・歯並び・骨格・加齢など、さまざまな要因が関係しています。

上唇の筋肉の動きが弱い

上唇を持ち上げる筋肉である上唇挙筋(じょうしんきょきん)・上唇鼻翼挙筋(じょうしんびよくきょきん)が発達していなければ、笑ったときに歯が隠れてしまいます。

  • 顔の中央部にあり、口角と上唇をこめかみ方向へ引き上げる上唇挙筋
  • 鼻の横にあり、上顎骨と上唇をつなぐ上唇鼻翼挙筋

筋肉が作用する部分は異なりますが、先天的な要因(生まれつきの筋肉の付き方)や、普段の表情の使い方の癖が影響してしまうことがあります。

歯の位置が低い・歯冠が短い

上の前歯が小さい方や、または低い位置に生えていると、笑ったときに歯が見えにくくなります。歯茎の発達が強すぎる歯肉過形成であれば、歯が隠れやすくなります。歯ぎしりや食いしばりなどの態癖があると、睡眠時に体重のおよそ二倍以上の力が歯にかかっています。その力により、歯が摩耗して長さ(歯冠)が短くなってしまい、前歯が見えないということが考えられます。

上顎の骨格の影響

上顎の骨の発達がうまくいかず広がらなかったり、上顎が後方に引っ込んでしまうと、上の前歯が唇の奥に隠れやすくなります。また、両親も同じように上顎が狭いという方は、骨格について遺伝している可能性が高いです。

加齢による影響

年齢とともに、上唇の動きに関わる筋肉(上唇挙筋・口輪筋)が衰えていきます。40代を過ぎるとどうしても筋力に衰えが目立ち、口をすぼめたり、口角を上げるために唇の周りにある口輪筋がうまく働きません。筋肉が加齢により下がることで、今まで見えていた前歯が見えにくくなることもあります。原因が組み合わさればより、逆ガミースマイルの症状が現れます。

逆ガミースマイルの見た目への影響とデメリット

逆ガミースマイルは、見た目などへ影響を及ぼします。

笑顔が不自然に見える

前歯がほとんど見えないことから、通常の歯並びや骨格の方とと比べると、本人が笑っている状態でも、硬く見えます。

不機嫌そう・老けて見えることがある

口元を動かさないと、怒っているように見られることもあります。加齢とともに顔の筋肉にたるみが出たり、口角が下がることで、より歯が見えにくくなってしまいます。

自信を持って笑えなくなる

思いっきり笑いたいのに、笑顔が自然な感じにならないと悩む人が多いです。逆ガミースマイルは健康に悪影響を及ぼすものではありませんが、見た目について悩みを抱えてしまいます。コンプレックスになると、精神的に不健康となるため、デメリットといえます。

逆ガミースマイルの治療方法

逆ガミースマイルは、原因に応じた治療法を選択することで改善が可能です。

矯正治療

歯並びや歯の位置が原因である場合は、歯列矯正が最適な治療法です。歯を正しい位置に移動させ、笑ったときに自然に歯が見えるようにすることが可能です。

  • 歯にブラケットを接着し、その中にワイヤーを通して矯正力をかけるワイヤー矯正
  • マウスピースを作製し、交換していく過程で矯正力をかけるマウスピース矯正
ワイヤーとマウスピースの違い

歯がねじれている捻転歯(ねんてんし)も逆ガミースマイルには考えられます。その際にはワイヤー矯正がおすすめですが、ワイヤーを通すブラケットという突起を歯の表側に付けるか、歯の裏側に付けるかという位置によって、費用や治療期間、何よりも審美性が異なります。マウスピース矯正は周囲から治療中と分かりにくく、患者さんご自身で取り外せる装置で、食事は何でも召し上がれるというメリットがありますが、一日20時間以上装着しなければ歯は動かないというデメリットがあります。

歯冠長延長切除術

歯の長さが短い方へ最適なのが、クラウンレングスニング(CLP)と呼ばれる外科的処置です。麻酔を行って歯肉を切開し、歯と骨から歯肉を剥がし、歯根の部分を丁寧に清掃して歯垢や歯石を除去します。歯肉を固定して、骨を整形してから、歯周組織の回復を待つために丁寧に縫合を行います。半永久的な効果が期待できるが、手術になるためダウンタイムというデメリットがあります。

セラミッククラウンやラミネートべニア

歯が短い場合は、セラミックで作製した人工歯を天然歯に被せる、もしくは貼ることで、審美性や長さを調整します。

  • 天然歯を削ってセラミックを被せるのをセラミッククラウン
  • 天然歯の唇側を少し平らにしてセラミックの薄い板を接着するのをラミネートべニア

いずれもセラミック治療で審美的な前歯にしますが、天然歯を削る際に痛みが出ると歯髄(神経)の治療が必要となる可能性があります。また、健康な歯を削ることがデメリットと言えます。

ボツラックス注射

軽度の逆ガミースマイルの方にはボツラックス注射が最適ということがあります。上唇を引き下げる筋肉にボツリヌストキシン製剤を注射すると、症状が軽減されます。手軽な治療であり、治療後約30分経てばメイクができる状態なので、ダウンタイムが少ない治療です。ただし、効果は6ヶ月程度なので、効果の持続を求める方には向いていません。

歯ぎしりが原因の方にはナイトガードで歯を咬合の力から守るという対処法があります。どの治療法が適しているかは、歯科医師と相談して決めるのがベストです。

悪化させないための日常ケアと予防策

逆ガミースマイルを防ぐためには、セルフケアや日常習慣を見直すことも大切です。

表情筋を鍛えるトレーニングを行う

口角を意識的に上げる練習をしましょう。笑顔を作るトレーニングを行い、鏡で確認しながら上唇の筋肉を鍛えてください。

姿勢を正しく保つ

猫背でいると顔の筋肉の衰えにつながることがあります。姿勢が悪い子供は、上顎の発達に影響を及ぼします。日頃から正しい姿勢を意識しましょう。

定期的に歯科検診を受ける

歯並びや歯茎の状態を定期的にチェックしてもらいましょう。早期に発見すれば、治療が短く終わったり、経過観察という可能性もあります。クリーニングで歯や歯肉の状態も清潔に健康な状態を保ちましょう。日常的な意識やケアを続けることで、逆ガミースマイルを悪化させないことが可能です。

まとめ


逆ガミースマイルとは、笑ったときに歯がほとんど見えず、口元が不自然に見える状態のことです。主な原因は、上唇の筋肉・歯の位置・骨格になり、矯正治療で改善が可能なケースが多いですが、日常的なトレーニングや姿勢の改善も大切です。「もっと自然な笑顔になりたい!」と思ったら、歯科医に相談し、自分に合った治療法を見つけましょう。