虫歯

虫歯はどのくらい放置したらやばいの?

虫歯はどのくらい放置したらやばいの?

虫歯になっても痛くない場合は、ついそのまま放置して治療を延ばし延ばしにしてしまうことがあります。虫歯は初期症状から重症化するまでにはある程度の時間がかかり、放置するとどんどん悪化していき、治療するとなると通院回数が増え、治療費も増大します。
ここでは虫歯がどのように進行し、放置すると健康にどのようなリスクを及ぼすかについてご説明します。

放置して手遅れの虫歯はどんな状態?

手遅れの虫歯は、虫歯が進行して一般的な治療方法ではもう治せない位の状態になっています。

虫歯の進行のしかた

虫歯の初期ではエナメル質が僅かに酸で溶かされる程度ですが、そのまま虫歯が進行するとエナメル質に穴があきます。エナメル質の内部の象牙質は、エナメル質よりもやわらかいため、そこから虫歯の進行は早くなります。

虫歯菌の出す酸が象牙質を溶かしてその内部にある歯髄(神経)に達すると、虫歯の部分から強い痛みが発生します。虫歯を治療せずにこの痛みに耐えていると、やがて神経が腐ってしまい、一時的に痛みは止まります。しかしこの段階になると歯茎の上に出ている歯冠は既に溶けたり割れたりして、ボロボロの状態になっていることが多く、治療が不可能で抜歯になるケースもあります。

虫歯を放置するとどんなリスクがあるの?

虫歯のリスク

虫歯をそのまま治療せずに放置すると下記のような健康リスクが生じます。

1.歯痛

虫歯が歯の神経まで到達した場合に痛みが発生します。痛みは物を噛んだ時に最も悪化します。

2.歯の感染または膿瘍

虫歯が歯髄に達すると、歯の神経を破壊して感染が広がります。その結果歯根の先端に膿が溜まると根尖病巣が形成されます。根尖病巣が出来ると強い痛みを伴い、時には顔や口の腫れ、発熱、頭痛を引き起こすことがあります。

3.歯周病

虫歯の表面はザラザラしていて汚れの付きやすい状態になっています。虫歯の上に歯垢がたまると、更に細菌が蓄積し、歯肉炎を引き起こします。歯肉炎が進行すると歯周病になり、歯茎や骨などの歯周組織を溶かしていき、歯がグラグラになって自然に抜けてしまうこともあります。

4.噛む機能の損失

虫歯が進行すると歯が割れたり、欠けたりします。虫歯による歯の欠けが多い場合には、抜歯になる可能性があります。

5.全身への影響

口内の細菌が歯茎から毛細血管に入り、血流に乗って全身へ広がると、心臓病や糖尿病などの既存の健康問題がある場合や、免疫力が低下している場合には、問題を起こす可能性があります。

6.美容上の問題

虫歯によって前歯の色が黒くなったり、割れや欠けで形が変わったりすると、見た目に影響を及ぼす可能性があります。

虫歯の治療方法とは?

虫歯の治療は主に、虫歯の程度と位置によります。以下に一般的な治療法をいくつか紹介します:

1.詰め物(インレー)

最も一般的な虫歯の治療法です。虫歯の穴がまだ小さい場合に、その周囲を少し削って虫歯に感染している部分を取り除き、コンポジットレジン(歯科用プラスチック)で、金属などで穴を埋めます。

2.被せ物(クラウン)

虫歯が進行して歯に大きく穴が空いている場合には、被せ物を被せる治療を行います。虫歯に感染している部分をきれいに削り取った後、被せ物を被せるために歯の形を整えます。型取りをして歯全体を覆う形の被せ物を作製します。被せ物の素材は金属やセラミック等です。

3.根管治療

歯髄(神経)まで達している虫歯の場合は、根管治療で歯の神経を抜く必要があります。歯根の中には根管という神経の入っている管があり、その部分から汚染されている組織を全て除去してきれいに洗浄し、特別な材料を入れて穴を埋めます。数回の通院が必要で、その後は被せ物を作製して被せます。

4.抜歯

虫歯の治療が手遅れになり、既に虫歯で歯がボロボロの状態になっている場合は、歯を抜く必要があります。この段階では歯根部も虫歯に冒されているため、抜歯はそれ程大変ではない場合が多いです。歯抜後は、ブリッジ、入れ歯、インプラントのどれかによって、歯がなくなった部分を補う必要があります。

虫歯が出来るまでのプロセス

虫歯の生成は主に次のようなプロセスで進行します。

1.食べ物からプラークを形成

口腔内の細菌が食べ物、特に砂糖とアミノ酸を利用して歯垢を形成します。歯垢は白っぽい、または透明な粘り気のある層で、歯の表面に付着します。

2.細菌による酸の生成とエナメル質の脱灰

歯垢の中には細菌がたくさん棲んでいます。これらの細菌は、食べ物から得た砂糖を分解して酸を生成します。この酸によって歯の表面のエナメル質が溶かされてしまいます。これを脱灰(デミネラリゼーション)といいます。

エナメル質が脱灰されると、初期の虫歯の状態になり、歯の表面に白斑と呼ばれる白っぽい部分が出来ます。

3.虫歯の進行

歯が脱灰すると、酸によって溶け出したミネラルが、唾液の働きで再度歯の表面に取り込まれます。これを再石灰化と呼びます。お口の中では脱灰と再石灰化が繰り返され、脱灰が優勢になるとエナメル質に穴が空いて虫歯が形成されます。

4.虫歯の深部への進行

虫歯に気づかず、虫歯が進行してしまうと、虫歯の穴はエナメル質を貫通してその内部の象牙質へと広がっていきます。象牙質はエナメル質に比べると柔らかいため、虫歯の進行は早く、そのまま虫歯の穴が広がって歯髄に達すると、激しい痛みの起こる歯髄炎や根尖性歯周炎などを引き起こす可能性があります。

このように、虫歯は小さな白斑から始まりますが、歯に穴が空くとその後の進行は早いため、早期の発見と治療が重要となります。

虫歯予防のためには?

虫歯予防のためのケアとしては以下のようなことをお勧めします。

1. 歯磨き

歯みがき

毎食後すぐと就寝前に歯磨きを行いましょう。特に就寝前は丁寧に歯を磨き、一日の汚れを落としましょう。歯ブラシは柔らかめのものを選び、力を抜いてブラシの先端を小刻みに動かしながら歯と歯茎の境目の汚れを特に気をつけて除去します。

2. デンタルフロス

デンタルフロス

歯と歯の間の汚れや、歯と歯茎の間は、歯ブラシだけでは汚れの除去が難しい場所です。そのため、デンタルフロスを歯と歯の間に通して、フロスで汚れを絡め取るようにして取り除きましょう。1日1回だけでも効果が見込めます。

慣れるまではホルダー状の糸ようじを使い、慣れてきたら糸巻きタイプのデンタルフロスを使用すると、効果的に汚れを落とすことが出来ます。

3. フッ素

フッ素を含む歯磨き剤を使用すると歯のエナメル質が強化され、虫歯予防につながります。

4. 虫歯になりにくい食事

糖分の摂取を控えめにし、バランスの良い食事を心がけましょう。間食を避けるようにすると、口内が酸性に傾く時間を減らすことが出来、虫歯予防に効果があります。

5. 定期的な歯科健診

診療

年に数回、歯科医院での歯と歯茎のチェックを受け、専門の器械で歯のクリーニングを受けましょう。虫歯、歯周病の早期発見、早期治療が可能になり、天然歯を長く健康な状態で保つことに繋がります。

虫歯を放置した場合に関するQ&A

放置した虫歯が手遅れになるとどんな状態になりますか?

手遅れの虫歯は、虫歯菌によってエナメル質や象牙質が損傷し、歯髄(神経)まで達してしまいます。この段階では強い痛みが発生し、最終的には歯冠が損傷し、抜歯が必要な状態になることが多いです。

虫歯を放置するとどのようなリスクがありますか?

虫歯を放置すると、歯痛、歯の感染や膿瘍、歯周病の発症、噛む機能の損失、全身への影響、美容上の問題など多くの健康リスクが生じます。これらは日常生活に支障をきたし、場合によっては全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。

虫歯の治療法にはどのようなものがありますか?

虫歯の治療方法には、詰め物(インレー)、被せ物(クラウン)、根管治療、抜歯などがあります。治療法は虫歯の進行度や位置によって異なり、早期発見が重要です。

まとめ

歯のキャラクター

虫歯の進行スピードは生活習慣や口腔内環境によって違いますが、虫歯を放置すればするほど治療が困難になります。虫歯を手遅れになるまで放置しないためにも、歯が痛む、腫れる、歯に穴があく等の症状が現れる前に、定期的な歯科健診を受けることをお勧めします。虫歯を早期発見・早期治療して、健康な歯を長く保てるようにしましょう。

虫歯の放置による進行に関する研究結果を紹介します。

1. 【Hummel et al. (2019)】によると、虫歯の進行は普遍的で予測可能な速度に従い、特に集団内の虫歯の重症度が高いほど、進行速度も高くなる傾向があります。この研究は、乳歯と永久歯の虫歯進行率についての体系的なレビューを提供しています。

2. 【Anderson et al. (2017)】は、1歳から3歳の子供たちにおいて、フッ素バーニッシュの半年ごとの処理が歯の表面レベルの虫歯進行に影響を与えることを研究しました。この研究では、健康な歯の表面は進行が少なく、中程度の腐食を示す歯では、進行して深刻な腐食に至ることが一般的であることがわかりました。

これらの研究によれば、虫歯は特定の速度で進行することがあり、特に重症度が高い場合にはより迅速に進行する可能性があることが示されています。早期の介入と定期的なケアが重要であることが強調されています。