歯と口のトラブル

口が開きづらい、顎関節で音がするのは顎関節症のせい?

口が開きづらい、顎関節で音がするのは顎関節症のせい?

口が大きくスムーズに開かない、口を開閉する時に顎関節で音が鳴る、などの症状は顎関節症が疑われます。顎関節に痛みがあるのも顎関節症に多い症状です。顎関節症についてご説明します。

顎関節症の症状とは?

顎関節症

以下のような症状がある場合は顎関節症が疑われます。気になる場合は口腔外科を受診しましょう。

特に多い症状

  • 顎の関節が痛い
  • 口を大きく開けられない
  • 顎の関節を動かすと音がする

顎関節症(がくかんせつしょう)とは?

顎には筋肉、関節、神経があり、下顎を支えています。食事や話す際にはこれらが連動して動くのですが、何らかの原因で顎関節やその周囲に痛みが出たり動きにくくなるのが顎関節症です。

顎関節症の症状は顎関節やお口の周囲だけでなく、肩こりや腕や指のしびれ、片頭痛などが起こる場合もあります。既に症状に悩んでおられる場合は、一度口腔外科を受診しましょう。顎関節を安静にするためにセルフで出来る対処もあります。

顎関節症の原因

顎関節症が起こるのは、上下の歯の噛み合わせの異常が原因となることが多いですが、噛み合わせが悪くなる原因は一つだけではなく、複数の原因が関与しています。噛み合わせが悪くなる主な原因は以下のようなものです。

1. TCH(Tooth Contacting Habit)

これは日中に無意識に行われる上の歯と下の歯を接触させる習慣で、TCHは顎関節症患者の多くに見られます。食事の時以外は上下の顎を接触させないように意識することで顎関節症の症状が改善することが多いため、顎関節症の最大の要因の一つとされています。

2. 日中の動作の癖

頬杖をつく、ガムを噛む、爪を噛む、片側の歯でばかり噛む、猫背などが含まれます。

3. 夜間の習慣や癖

歯ぎしりやうつぶせ寝も顎関節症を引き起こす要因となります。

4. 精神的要因

仕事や対人関係でのストレスや緊張が続くとTCHの引き金になりうるとともに、顎関節周辺の炎症を引き起こす原因となります。

5. 転倒などの外傷

転倒や顔面打撲などの突発的な外傷が顎関節症の発症に繋がることがあります。

6. 特定のスポーツや楽器演奏

ラグビー、アメリカンフットボール、レスリング、柔道などのコンタクトスポーツ、またサックスやフルートなどの楽器演奏は、顎関節への負担が大きくなり得ます。

これらのような日常生活での無意識での行動や癖が顎関節症の発症に関与することがあります。上下の歯が接触する時間は通常は1日20分未満ですが、顎関節症の患者さんはこれを大きく上回ることが多いです。これにより顎関節に負担がかかり、症状が発生するとされています。

顎関節症の治療方法

噛み合わせを治すためには、いくつかの方法があります。

  • スプリント(マウスピースのようなもの)を上顎または下顎に入れて、上下の噛み合わせが正しく均等に接するようにする。
  • 被せ物や入れ歯の高さの微調整を行い、正しい噛み合わせにする。
  • セルフケア
  • 鎮痛薬などの内服治療

顎関節症のセルフケアのやり方

顎関節やお口の周囲の筋肉に痛みがあるときは、まず安静にしましょう。症状を今以上に悪化させないために、大口を開けたり、硬いものを食べて顎を使いすぎることに気をつけましょう。

生活の中で気を付ける点は以下のようなものです。

  1. 顎関節に痛みがある場合は、おかゆ、そば、うどんなどあまり噛まなくてよい食事をとり、硬いものは避ける。
  2. 顔の筋肉をやわらげ、上下の歯を接触させないようにする。
  3. 大きなあくびや長時間の歯科治療は避けましょう。
  4. 仰臥寝(あおむけね)と低い枕を使用しましょう。うつぶせ寝はしてはいけません。
  5. 同じ姿勢を長く続けないようにする。
  6. 猫背にならないようにする。
  7. 頬杖をつかない。

口が開きづらい、顎関節で音がするのは顎関節症のせい?に関するQ&A

顎関節症の主な症状はどのようなものですか?

顎関節症の主な症状には、顎の関節が痛む、口を大きく開けられない、顎の関節を動かすと音がするなどがあります。これらの症状は顎関節に異常が生じていることを示しており、口腔外科の受診が推奨されます。

顎関節症の原因は何ですか?

顎関節症の原因には、日中の無意識の動作(TCH)、日中の動作の癖(頬杖、ガム噛み)、夜間の習慣(歯ぎしり)、精神的要因(ストレス)、外傷(転倒、顔面打撲)、特定のスポーツや楽器演奏などがあります。これらは顎関節に負担をかけ、症状を引き起こすことがあります。

顎関節症の治療方法にはどのようなものがありますか?

顎関節症の治療方法には、スプリント(マウスピースのようなもの)を使って噛み合わせを調整する、被せ物や入れ歯の高さを微調整する、セルフケア(痛みの安静保持、食事内容の調整)、鎮痛薬などの内服治療があります。

まとめ

歯のキャラクター

口が開きづらい、顎関節で音がするなどの症状は、顎関節症の可能性があります。日常生活の中の無意識の習慣や、精神的ストレスなど複数の要因が顎関節症を引き起こしていることが多いです。

顎関節症は早期の診察と適切なセルフケアで、症状の改善が期待できます。症状が気になる場合は、口腔外科に相談しましょう。

口が開きづらい、顎関節で音がする症状が顎関節症(TMD)のせいかどうかについて、以下の論文から得られた情報を提供します。

1. Matheson, Fermo, & Blackwelder (2023)の研究では、顎関節症が5%から12%の人口に影響を及ぼし、頭痛、歯ぎしり、顎関節の痛み、顎のポップ音やクリック音、首の痛み、耳鳴り、めまい、聴力の低下、音への過敏などの症状が現れることが示されています。【Matheson, Fermo, & Blackwelder, 2023

2. Kumar, Daigavane, Jain, & Mantri (2022)による研究では、顎関節症の最も一般的な症状として、顔の痛み、頭痛、関節のクリック音やポップ音、顎機能の困難が挙げられています。【Kumar, Daigavane, Jain, & Mantri, 2022

これらの研究に基づくと、口が開きづらい、顎関節で音がする症状は顎関節症の可能性が高いと考えられます。顎関節症は様々な症状を引き起こすことがあり、正しい診断と治療を受けることが重要です。症状が現れた場合は、専門の医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることをお勧めします。