40代以降で矯正治療を始める方が増えています。しかし、若年層と比べて注意すべき点や特有のリスクが存在します。40代からの矯正治療に関する重要なポイントをご説明します。
40代からの矯正治療の現状
厚生労働省の「患者調査」によれば、矯正治療を受ける40代の患者さんは増加傾向にあります。例えば、2017年には約900人だったのが、2020年には約1,100人と増加しています。この背景には、審美的な理由や、若い頃に矯正治療を受けたものの後戻りが生じて再治療を希望する方、自分の歯を長く健康に保ちたいと考える方々によって増加したことが考えられます。
40代で矯正治療を始める際のリスク
虫歯や歯周病の治療の必要性
年齢を重ねると、知らないうちに虫歯が出来ていたり、歯周病が進行していることがあります。矯正治療を始める前に、まずこれらの治療をする必要があり、その結果、治療開始までに時間がかかることがあります。
歯茎の後退の可能性
歯周病や加齢により歯茎が下がっている場合、矯正治療によってさらに歯茎が下がることがあります。これを防ぐためには、治療計画の段階で口腔内の状態を十分に考慮し、定期的なチェックとケアが大切です。
歯の移動速度が遅くなる
年齢とともに新陳代謝が低下し、歯の移動速度が遅くなる傾向があります。そのため、治療期間が若年層よりも長くなる可能性があります。また、歯並びが再度乱れないようにするためには、治療後の保定装置を毎日きちんとつけることが大切で、担当医の指示に従って正しく使用することが求められます。
装置への適応時間
矯正装置をつけると違和感や痛みを伴うことがあります。年齢が上がると、これらの違和感に慣れるまでに時間がかかることがあります。適応期間中の不快感を軽減するためには、担当医の指導のもとで適切な対処が必要です。
40代から矯正治療を始めるメリット
歯周病予防効果
歯並びが整うことで、歯磨きがしやすくなり、歯垢がたまるのを防ぐことができます。その結果、歯周病のリスクが減り、歯の寿命を延ばすことに繋がります。
噛み合わせの改善
正しい噛み合わせにより、食事中にしっかりと噛むことができ、一部の歯に過度な負担がかかることもなくなります。その結果、歯のすり減りや知覚過敏のリスクも減少します。
咀嚼と消化機能の向上
よく噛むことで食べ物を細かく粉砕することが出来、消化器官への負担が軽減されます。これにより、消化不良や胃腸の不調を防ぐことができます。
精神的コンプレックスの解消
長年の歯並びに対するコンプレックスを解消することで、自信を持って笑顔を見せることができ、精神的な満足感や社会的な自信を得ることができます。
40代に適した矯正治療の方法
ワイヤー矯正
歯の表面にブラケットを貼り付け、ワイヤーで歯を移動させる一般的な方法です。お口を開けると装置が見えるため、目立たないように白いセラミックのブラケットや白い樹脂を巻いたワイヤーを使用することも出来ます。
裏側矯正
歯の裏側にブラケットとワイヤーを装着する方法で、装置が見えにくく、審美性に優れています。
- 舌に違和感を感じる場合がありますが、徐々に慣れることができます。
- 技術的に高度な治療が必要であり、経験豊富な医師に相談することが大切です。
マウスピース型矯正装置
- 透明なマウスピースを使用した矯正治療で、目立ちにくいのが特徴です。
- 取り外し可能で、食事や歯磨きがいつも通りに行えます。
- ただし、患者さん自身の装着時間の管理が必要です。インビザラインの場合は1日22時間以上装着しないと、治療効果が薄れる場合があります。
矯正治療を成功させるためのポイント
定期的な健診の重要性
- 矯正治療中は、虫歯や歯周病の予防が重要です。
- 矯正装置の周辺は歯垢がたまりやすいため、定期的な健診で口腔内のクリーニングを行いましょう。
- 必要に応じて歯科医院でのクリーニングを受けることで、口腔環境を健康に保つことができます。
毎日の歯磨きを丁寧に行う
矯正治療中の歯磨きは特に重要です。以下のポイントを守りましょう。
- 専用の歯ブラシを使う・・矯正装置用の歯ブラシや歯間ブラシ、タフトブラシなどを活用します。
- フッ素入り歯磨き粉の使用・・虫歯予防効果を高めるために有効です。
- デンタルフロスやマウスウォッシュを活用・・歯と歯の間や装置の隙間の清掃に役立ちます。
担当医としっかり相談する
- 矯正治療には患者さんお一人おひとりの状態に応じたカスタマイズが必要です。
- 治療計画に関する疑問や不安は遠慮なく歯科医師に相談し、納得した上で治療を進めましょう。
- また、治療が進む中で感じる違和感やトラブルも、早めに医師に報告することで適切に対処してもらえます。
まとめ
40代から矯正治療を始めることは、決して遅すぎる選択ではありません。むしろ、今後の歯や全身の健康を保つために非常に有効な手段です。しかし、治療には年齢特有のリスクや課題が伴うため、十分な情報収集と担当医への相談が欠かせません。
矯正治療は長期間にわたる努力が求められるものの、噛み合わせや歯並びの改善、そしてコンプレックスの解消といった大きな成果を得ることができます。適切な準備と日々のケアを心がけ、笑顔に自信を持てる未来を目指しましょう。