親知らずの抜歯後の痛みや腫れや出血が気になり、処置に躊躇う方はおられます。親知らずの抜歯後に欠かせない注意点などをご説明します。
親知らずの抜歯後の穴が塞がるまでの期間は?
一般的に親知らずと呼ぶ歯は、第三大臼歯や智歯(ちし)、親知らずの抜歯後に歯を抜いた穴を抜歯窩(ばっしか)と専門的に呼びます。奥歯で見えにくいとはいえ、術後の歯が抜けた大きな穴がどの程度の期間で、早く元の状態に戻るのか気にされる方は多いでしょう。
新陳代謝が早い方や年齢などの差もありますが、親知らずの抜歯の処置方法によって、目安の期間は違います。レントゲン撮影による検査を行い、歯科医師がきちんと診断しなければいけません。
歯肉を切開せず親知らずを抜いた場合
歯肉を切開せずに親知らずが抜けた方は、親知らずがまっすぐに生えている方で、歯肉切開の方と比べて簡単な処置です。約1ヶ月程度で穴は塞がり元に戻ります。
歯肉を切開して親知らずを抜いた場合
歯肉を切開して親知らずを抜いた方は、親知らずが斜めや横向きに生えている・骨の中に埋まっている埋伏歯・骨の近くまで親知らずが虫歯になっていると骨を削る・歯肉の縫合の必要があります。そのため、親知らずの歯そのものよりも大きく穴が開くので、長い方では半年程度かかる場合もあります。
親知らずは上顎の左右に1本ずつ、下顎の左右に1本ずつ一番多い方で4本生えます。上顎は上顎神経が走っている位置が奥歯と遠いため、親知らずの抜歯には影響を及ぼしません。下顎は下顎神経が走っている下顎管が奥歯と近いため、親知らずの位置によってはどのような方法で親知らずを抜くのかしっかり検討しなければ、下顎管にある神経や血管を傷つける可能性があります。
抜歯後の腫れや痛みはどうなる?
親知らずの抜歯後、麻酔の作用が切れてくると、歯を抜いた侵襲による強い痛みや腫れが生じます。処方された鎮痛薬(痛み止め)を飲みますが、おおよそ2~3日くらいが一番痛みが続くピークの期間で頬や顔に腫れが目立つ時です。
日が経てば徐々に痛みや腫れは引く方が多いですが、先程の抜歯後の穴と同じように、口腔内の状態や、骨の固さ・柔らかさ、親知らずの深さや生え方(萌出)は個人差があります。「この日を越えれば腫れる状態が治ります」「どのくらいの時間で痛くなくなります」と歯医者さんが言えないのはそのためです。
親知らずの抜歯後の注意点
親知らずの抜歯後にドライソケットにならないためのポイントをご案内します。抜歯の穴を埋めるためには、下記の原因を作らないように注意することが大事です。
抜歯をすると、お口の中に歯槽骨が露出し、通常では歯槽骨の上に血餅(けっぺい)と呼ばれるかさぶたができ、歯茎が更に重なることで、穴は塞がっていきます。ところがある理由により血餅が出来なければ、骨は露出した状態のままになります。お口の中には細菌が多いため、骨に細菌感染による炎症が起きドライソケットになります。症状としては、口臭や膿・ひどい痛みなどが挙げられます。
抜歯後にぶくぶくうがいを控える
抜歯後は出血が多いため、どうしても口をゆすぎたい方、口腔状態をきれいにされたい方が多いでしょうが、水流によりかさぶたを剥がすことになり、ドライソケットの可能性が高まります。出血がある場合は、ガーゼを噛むことで止血を行うことをおすすめします。
抜歯後の歯磨きは要注意
穴があるため、食べかすが入りやすい状態です。とはいえ、歯ブラシでゴシゴシと擦ってしまうのは血餅がはがれてしまい、逆効果です。軽くゆすぐ程度にとどめておきましょう。
傷口を必要以上に舌で触らない
気になった部分を、舌先でついつい触ってしまいがちになりますが、血餅が取り除かれてしまいます。なるべく触らないように注意しましょう。
刺激物・固い食べ物・熱いもの・冷たいもの・アルコールなどを避ける
痛みや腫れが治まるまでは、辛い物や固い食べ物は避けましょう。食事の際に固い食べ物は前歯でちぎり、奥歯ですりつぶすことが必要なため、奥歯の抜歯後の穴に大きく影響を及ぼします。熱の刺激も骨の露出で伝達しやすいですし、アルコールを摂取すると血液の流れが良くなりすぎて、止血部分の出血が起きる恐れがあります。出血を指せないために、長い入浴や激しい運動も控えましょう。
喫煙をしない
タバコを吸うと、タバコに含まれるニコチンやタールで血管が収縮し、血流を悪くします。親知らずの穴に血餅ができにくいだけではなく、唾液の分泌が少なくなるため、歯周組織の細菌感染のリスクが高まります。
親知らずの抜歯後に関するQ&A
抜歯窩が自然に塞がる期間は個々の状況によりますが、一般的に、歯肉を切開せずに親知らずを抜いた場合は約1ヶ月程度、歯肉を切開して抜いた場合は半年程度かかることが多いです。
抜歯後の痛みや腫れのピークは通常2~3日で、その後徐々に引いていきますが、これも個々の状況によるので一概には言えません。
抜歯後の歯磨きは、食べかすが穴に入らないよう注意しつつ、抜歯窩を傷つけないようにゴシゴシと擦らず、軽くゆすぐ程度に留めるべきです。
まとめ
親知らずの抜歯後は、かさぶたである血餅を早く作り、感染を予防することが大切です。正常の状態で奥歯の噛み合わせを作ってくれれば良いですが、現代人の顎は小さいため正常な萌出が出来ず、抜歯鉗子で抜くケースが多いです。親知らずに不安がある方は、口腔外科のある歯科医院で一度お気軽にご予約のうえご相談ください。抜歯が必要な方は、その場合の費用や治療計画などをドクターやスタッフがご説明いたします。